このチュートリアルでは、シリコン基板上にあり、水負荷に作用するPMUTを解析します。PMUTは上部/下部電極と窒化アルミニウム活性層をもった構造をしており、Designerのプリミティブ形状作成機能を用いてモデリングを行います。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 2次元軸対称モデルの指定方法
- プリミティブ形状の作成方法
- ピエゾ素子の解析方法
- 結果処理
対応バージョン: OnScale 1.28.10
PMUTとは?: 圧電型マイクロマシン超音波振動子(piezoelectric micromachined ultrasonic transducer)です。PMUTは、素子の厚みで動作する圧電トランスデューサとは異なり、薄い圧電膜と結合した薄い膜の曲げ運動を用いています。
解析の概要
PMUTは、MEMsの小型化が期待されているアプリケーションの1つです。微細な薄膜構造の製造は、時間と費用のかかるプロセスです。 OnScaleを用いた解析により費用削減が期待できます。
このチュートリアルでは、OnScalesのプリミティブ形状作成機能を使ってPMUTモデル形状の作成し、解析する方法を示します。本解析は、2次元軸対称モデルで行います。モデルは2次元形状で作成しますが、指定された対称軸(ここではY軸)を中心に2Dモデルを自動的に回転させることで3次元モデルに変換しています。
解析のワークフロー
本セッションで紹介する解析のワークフローのビデオになります。
以下、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、PMUT_2D)
- 距離の単位系をμmに変更します。
- Model Typeで2D Axi-Symmetric Modelを選択します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます
Step2 - 材料物性の選択
このチュートリアルでは、予めユーザーが準備したマテリアルファイルを使用して物性値を設定します。添付ファイルをダウンロードし、プロジェクトファイルと同じ作業ディレクトリに保存してください。
- Project Materialsをクリックして、Materials Databaseウィンドウを開きます。
- 赤い矢印アイコンをクリックし、[Import User Project Materials From File]を選択してpmut.prjmatを選択します。
- aln→Piezoelectricを展開し、PolingをY +に変更します
- 完了をクリックします
Step3 - 形状の作成
Designerのプリミティブ形状作成機能を使って形状作成を行います。
Primitive 1
- 2D PrimitivesのRectangleをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_1が作成されます。primitive_1をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをsiに設定します。
- End(μm)を展開し、X(μm), Y(μm)にそれぞれ32.5, 7.5を入力します。
Primitive 2
- primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_2が作成されます。primitive_2をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをvoidに設定します。
- Begin(μm)を展開し、Y(μm)に3.0を入力します。
- End(μm)を展開し、X(μm), Y(μm)にそれぞれ22.5, 6.0を入力します。
Primitive 3
- primitive_2を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_3が作成されます。primitive_3をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをmolyに設定します。
- Begin(μm)を展開し、Y(μm)に6.0を入力します。
- End(μm)を展開し、Y(μm)に6.25を入力します。
Primitive 4
- primitive_3を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_4が作成されます。primitive_4をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをalnに設定します。
- Begin(μm)を展開し、Y(μm)に6.25を入力します。
- End(μm)を展開し、Y(μm)に7.25を入力します。
Primitive 5
- primitive_4を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_5が作成されます。primitive_5をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをmolyに設定します。
- Begin(μm)を展開し、Y(μm)に7.25を入力します。
- End(μm)を展開し、Y(μm)に7.5を入力します。
Primitive 6
- primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_6が作成されます。primitive_6をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをwatrに設定します。
- Begin(μm)を展開し、Y(μm)に7.5を入力します。
- End(μm)を展開し、Y(μm)に20を入力します。
Step4 - 対象となる周波数の指定
解析の対象となる周波数を入力します。
- Set up→Project Settingsを展開します。
- PropertiesにあるFrequency of Interest (Optional)を展開します。Frequency of Interest (Optional)にチェックを入れます。
- Value(Hz)に3e7を入力します。
Step5 - 入力する(電圧の)波形の指定
駆動電圧の波形を設定します。波形には周波数30MHzのRicker Wavelet関数を使用します。
- Forcing Functionsを展開し、Timeの隣の+をクリックします。
- プルダウンメニューからRicker Waveletを選択します。
- Drive Frequency (Hz)に3e7を入力します。
- Insertをクリックしてパネルを閉じます。
- Timeの下に、timefunc_1のツリーが新規作成されます。
Step6 - 回路の設定
回路を指定します。
- Circuitの隣の+をクリックします。
- 回路の2と3の間の線をクリックします。
- 左の電子部品の中から抵抗を選択します。
- 抵抗をクリックします。
- Resistanceに50を入力します。
- Insertをクリックしてパネルと閉じます。circuit_1が作成されます。
Step7 - メッシュサイズの指定
メッシュのサイズは、デフォルトの設定(MediumのBasic)を使用します。
Step8 - 電極の指定
このモデルは圧電モデルのため2つの電極(上部電極と下部電極)が必要です。上部電極はモデルを駆動し、下部電極はGNDに接地されます
下部電極(load 1)
- Model→Boundary Conditionsを展開します。Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryでprimitive_3(moly)を選択します。
- Interfacing Itemでprimitive_4(aln)を選択します。
- Create Loadをクリックすると、Loadツリーの下にload_1が作成されます。
上部電極(load 2)
- load 1から引き続き、Geometry Itemはprimitive_5 (moly)を選択します。
- Interface Itemは primitive_4 (aln) を選択します。
- Create Loadをクリックします。
Step9 - 電極の設定
- load_1をクリックします。PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューでVoltageを選択します。
- Area Scalingに2を入力します。
- Circuit(Optional)でcircuit_1を選択します。
- TerminationでGroundを選択します。
- load_2をクリックします。PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューからVoltageを選択します。
- Area Scalingに2を入力します。
- Circuit(Optional)でcircuit_1を選択します。
- Terminationでtimefunc_1を選択します。
Step10 - 境界条件の設定
境界条件を設定します。
- Boundary Conditionsの下にあるDomain Boundariesを展開します。
- PropertiesにあるX minimumを展開します。Boundary TypeをSymmetryへ変更します。
- X Maximumを展開します。Boundary TypeをFreeへ変更します。
- Y minimumを展開します。Boundary TypeをFixedへ変更します。
- Y Maximumを展開します。Boundary TypeをAbsorbigへ変更します。
Step11 - 解析計算時間の指定
解析計算は、実時間で2.7[μs]まで計算を行います。
- Analysisをクリックします。
- Propertiesを展開し、Simulation Run Timeに1.0e-6を入力します。
Step12 - 計算結果出力の設定
2つの出力を設定します。
- Y方向変位の時間履歴(グラフ)
- 5MHzにおけるY方向変位のモード形状(コンター図)
Y方向変位の時間履歴(グラフ)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをTime Historyへ変更します。
- Array TypeをDisplacementへ変更します。
- Array ComponentをYへ変更します。
- Location (μm)を展開し、Yに7.5を入力します。
5MHzにおけるY方向変位のモード形状(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをShape Dataへ変更します。
- Array TypeをDisplacementへ変更します。
- Array ComponentをYへ変更します。
- Frequency(Hz)に5e+6を入力します。
Step13 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クライド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Jobの名前を別途、入力することも可能です。
- プルダウンメニューから2CPUsを選択します。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。
- Storageをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックします。
- メニューが開きます。Download Allを選択します。
Step14 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果のロード
- File Explorerをクリックし、フォルダ1を展開します。
- shape.flxdatoをクリックします。
- .flxhstをダブルクリックします。
- Results Managerをクリックします。
5MHzにおけるY方向変位のモード形状(コンター図)
- Data out→PMUT_2D-shape→Grid→Mode Shapes→Mode-1を展開します。
- ydsp上で右クリックします。
- Animated Plotをクリックします。
- Scale Factorに0.05を入力します。
- Number of Loopsで3を選択します。
- 再生ボタンをクリックして、モード形状のアニメーションを表示します。
Y方向変位の時間履歴(グラフ)
- ボタンタブHomeをクリック、Reset Viewportをクリックします。
- Reset Current Viewpointを選択します。
- Flex History→PMUT_2D→ydspをクリックします。
- Plot TitleにY-Displacement on Top Electrodeを入力します。
- Y-Axis LabelにDisplacementを入力します。
まとめ
このチュートリアルでは、シリコン基板上にあり、水負荷に作用するPMUTを解析しました。 チュートリアルの内容やモデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。