このチュートリアルでは、1-3コンポジットアレイのピエゾインジューサを解析します。Designerのプリミティブ形状作成機能を用いて、100本の柱をもつ1~3個のピエゾコンポジットの3次元モデルを作成します。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 3次元モデルの指定方法
- プリミティブ形状の作成方法
- 圧電材料のシミュレーション方法
- 結果処理(1MHzにおけるY方向の変位)
対応バージョン: OnScale 1.28.10
注: 1-3ピエゾコンポジットは、多くの高性能超音波 トランデューサー の材料となっています。 圧電素子をエポキシまたは活性ポリマーなどの不動態ポリマーと組み合わせることによって、様々な圧電複合材料を製造することができます。 複合材料の分類は、それらの接続性に従って行われ、2-2、1-3、3-3から選択する多くのオプションがあります。このチュートリアルでは、1-3圧電複合構造を構築しています。
解析の概要
有限要素法を用いてコンポジットアレイの解析を行います。
解析により、超音波センサの設計、および製造について検討することが可能になります。
つまりプロトタイプの試作や実験を行う前に、費用対効果の良い設計を検討することができます。
OnScaleの解析により、様々な形状パラメータを変更しながら設計検討を行うことができます。
これにより、コストのかかる設計ミスや出戻りを防ぎつつ、材料や形状の最適な組み合わせを選択することができます。
以下、解析の概要を示します。
解析モデル図
表1: 解析モデル、及び解析結果の概要
モデル: |
- 2400μm×2400μm×1000μm |
メッシュサイズ: |
波長に対して1/30分割サイズ |
解析の実時間 | 1e-4 秒 |
出力結果: |
周波数1MHzに受けるY方向変位のモード形状(コンター図) |
解析で使用する材料物性を示します。
表2: 材料物性値
項目 | 材料物性値 | |
材料名 | Vantico HY1300/ | CTS 3203HD |
OnScaleデータベース内の名前 | hard | pmt3 |
密度 | 1149 kg.m-3 | 7820 kg.m-3 |
バルク速度 | 2536 m.s-1 | 4708.359 m.s-1 |
せん断速度 | 1179 m.s-1 | 1687.891 m.s-1 |
注: OnScaleの材料物性データベースでは、弾性率とポアソン比の代わりにバルク速度とせん断速度を値を使って定義しています。 両者の関係性について詳細を知りたい方は、ここのページをご参照下さい。
解析のワークフロー
本セッションで紹介する解析のワークフローのビデオになります。
以下、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、1-3_Comp)
- 距離の単位系をmmに変更します。
- Model Typeで3D Modelを選択します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます
Step2 - 材料物性の選択
OnScaleに搭載されている材料物性データベースから、pmt3とhardを選択します。
- Project Materialsクリックし、材料物性データベースを展開します。
- 左のGlobal DatabaseにあるPiezoelectricを展開します。
- CTS 3203HDをダブルクリックしてください。
- 左のGlobal DatabaseにあるEpoxyを展開します。
- Vantico HY1300/CY1301をダブルクリックしてください。
- 右のProject Materialsにあるpmt3を展開し、polingをY+へ変更します。
- Doneをクリックしてパネルを閉じます。
Step3 - 形状の作成
Designerのプリミティブ形状作成機能を使用します。Cuboidを2回使い1つのセル(柱)を作成します。それぞれCuboidは、Y軸方向に沿って作成できます。1つのセル形状を繰り返すことで全体形状を作成します。
Primitive 1
- Primitivesのcuboidをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_1が作成されますので、primitive_1をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをhardを選択します。
- End(mm)を展開し、X(mm), Y(mm), Z(mm)にそれぞれ、0.48, 1.0, 0.48を入力します。
- ワークスペースを右クリックしてReset Viewを選択します。
- Reset Viewをクリックすると、表示がリセットされて全体形状があらわれます。モデルを回転させて、移動します。
Primitive 2
- primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_2が作成されます。
- PropertiesにあるMaterialをpmt3を選択します。
- Begin(mm)を展開し、X(mm), Y(mm), Z(mm)にそれぞれ0.08, 0.0, 0.08を入力します。
- End(mm)を展開し、X(mm), Y(mm), Z(mm)にそれぞれ0.40, 1.0, 0.40を入力します。
Step4 - セルを繰り返してパターンを作成
ステンレス鋼板に加える荷重を作成します。
- Ctrlキーを押しながら、primitive_1とprimitive_2をクリックします。
- Pattern TypeをLinearに選択します。
- Num. of Reps.を展開し、X, Y, Zにそれぞれ 5, 1, 5を入力します。
- Separation Distance(mm)を展開し、X, Y, Zにそれぞれ0.48, 0, 0.48を入力します。
Step5 - 入力波形の指定
電圧の指定ではありません。波形だけの指定になります。波形は時間の関数として指定しますが、ここではRicker Wavelet関数を使用します。
- Forcing Functionsのタブを展開します。Timeの横にある+をクリックすると、Define Input Time functionが開きます。
- プルダウンメニューからRicker Waveletを選択します。
- Insertをクリックしてパネルを閉じます。Timeの下に、timefunc_1のツリーが新規作成されます。
Step6 - メッシュサイズの指定
波長あたり30要素で分割するようにメッシュサイズを指定します。
- Model→Mesh→Configurationを選択します。
- PropertiesにあるDefinitionsでWavelength Basedを選択します。
- Element per Wavelengthに30を入力します。
- Mesh VelocityでDefinedを選択します。
- Valueに1179.0を入力します。
Step7 - 電極の指定
このステップでは、下部と上部に電極を作成します。以下で作成するload_1は上部の電極になります。上部の電極にForcing Functionsで指定したtimefunc_1の(電圧)波形が指定されます。 load_2は下部の電極で、Groundとして設定されます。
上部の電源(load_1)
- Boundary Conditionsを展開します、Boundary Conditionsの下にLoadsがありますので、Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryのプルダウンメニューでprimitive_2(pmt3)を選択します。
- Interfacing Itemのプルダウンメニューでside 4 (ymax)を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。
下部の電源(load_2)
- Boundary Conditionsを展開します、Boundary Conditionsの下にLoadsがありますので、Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryのプルダウンメニューでprimitive_2(pmt3)を選択します。
- Interfacing Itemのプルダウンメニューでside 3 (ymin)を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。
作成した上部の電極(load_1)と下部の電極(load_2)に対して、上部を駆動、下部を接地するように設定します。
- load_1をクリックします。
- PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューでVoltageを選択します。
- Area Scalingに4を入力します。
- Terminationでtimefunc_1を選択します。
- load_2をクリックします。
- PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューでVoltageを選択します。
- Area Scalingに4を入力します。
- TerminationでGroundを選択します。
Step8 - 境界条件の設定
実際のX軸とZ軸に沿って対称であるため、対称境界を指定します。
- Boundary Conditionsの下にあるDomain Boundariesを展開します。
- PropertiesにあるX minimumを展開し、Boundary TypeをSymmetryへ変更します。
- Z minimumを展開し、Boundary TypeをSymmetryへ変更します。
Step9 - 解析計算時間の設定
本解析は静解析として行います。
- Analysisをクリックします。
- Simulation Run Timeに1e-4を入力します。
Step10 - 計算結果出力の設定
周波数1MHzに受けるY方向変位のモード形状(コンター図)を結果出力する設定を行います。
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをShape Dataへ変更します。
- Array TypeをDisplacementへ変更します。
- Array ComponentをYへ変更します。
- Frequency(Hz)に1e+6を入力します。
Step11 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クライド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Jobの名前を別途、入力することも可能です。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- プルダウンメニューで16CPUsへ変更します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。
- Storageをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックします。
- メニューが開きます。Download Allを選択します。
Step11 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果のロード
- File Explorerタブをクリックします。
- ダウンロードした解析結果フォルダを指定します。
- shape.flxdatoをダブルクリックします。
- 1-3_Comp.flxhstをダブルクリックします。
- Results Managerをクリックします
周波数1MHzに受けるY方向変位のモード形状(コンター図)
- Data out→1-3_Comp-shape→Grid→Mode Shapes→Mode_1、ydspをダブルクリックします。
- リボンタブのModel Graphicsをクリックします。
- Symmetryをクリックします。
- About Xを選択します、同様にAbout Yを選択します。
- Scale Factorに0.01を入力します。
- ydsp上で 右クリックし、Plot Shape Movieを選択します。そして、Active DataにあるSave Videoにチェックを入れます。
- 動画ファイルの保存先、ファイル名を指定します。
- 再生ボタンをクリックします。
インピーダンス(グラフ)
一旦、表示をクリアしたのちに、インピーダンスグラフを表示させます。
- リボンタブHomeを選択、Reset Viewportをクリックし、Reset Current Viewportを選択します。
- Flex History→1-3_Comp→pize load1:Chargeを選択します。
- リボンタブのHomeにあるImpedanceをクリックします。
- Freqency Historyの下に、Impd:load1.ampがあらわれますので、クリックします。
- yAxisのLog yAxisをクリックして、セミログプロットにします。
まとめ
このチュートリアルでは、1-3コンポジットアレイのピエゾインジューサを解析し、周波数1MHzに受けるY方向変位のモード形状、及びインピーダンスを確認しました。チュートリアルの内容やモデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。