このチュートリアルでは、欠陥を含む鋼鉄ブロックに対する超音波TODF法を解析します。OnScaleのプリミティブ形状を作成する機能を用いて欠損がある鋼鉄ブロックを作成します。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 2次元対称モデルの設定方法
- プリミティブ形状の作成方法
- 時間依存の境界条件(音波の入力)の設定方法
- 音圧の解析方法
対応バージョン: OnScale 1.28.10
解析の概要
TOFD法による超音波検査は、非破壊検査(NDT)の高感度で正確な方法です。
TOFD法は様々な分野で活用されています。 例えば溶接シームの急速溶接試験などで、これは、垂直TOFDスキャンとも呼ばれます。
本チュートリアルでは、鋼鉄製テストブロック中を伝播する波をシミュレートします。
本セッションではモデル形状、及び解析の概要を示します。
表1: 解析モデル、及び解析結果の概要
モデル: |
- 鋼鉄ブロック 寸法 28mm x 15mm - 2つのプローブ傾斜角18度 寸法 9mm x 4.096mmの寸法 |
メッシュサイズ: |
31(μm) |
解析の実時間 | 5e-05 (sec) |
出力結果: |
-X=24mm, Y=18mmにおける音圧の時間履歴(グラフ) -最大音圧(コンター図) |
解析で使用する材料物性を示します。
表2: 材料物性値
項目 | 材料物性値 | |
材料名 | Stainless Steel, Generic | Rexolite |
OnScaleデータベース内の名前 | stst | rxlt |
密度 | 7890 kg.m-3 | 1060 kg.m-3 |
バルク速度 | 5790 ms-1 | 2340 ms-1 |
せん断速度 | 3100 ms-1 | 1100 ms-1 |
注: OnScaleの材料物性データベースでは、弾性率とポアソン比の代わりにバルク速度とせん断速度を値を使って定義しています。 両者の関係性について詳細を知りたい方は、ここのページをご参照下さい。
解析のワークフロー
本セッションで紹介する解析のワークフローになります。
以下、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、TOFD)
- 距離の単位系をmmに変更します。
- Model Typeで2D Modelを選択します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます
Step2 - 対象となる周波数の指定
解析の対象となる周波数を入力します。
- Set up→Project Settingsを展開します。
- PropertiesにあるFrequency of Interest (Optional)を展開し、チェックを入れます。
- Value(Hz)に5e+6を入力します。
Step3 - 材料物性の選択
OnScaleに搭載されている材料物性データベースから、SteelとRexolite(架橋ポリスチレン樹脂)を選択します。
- Project Materialsクリックし、材料物性データベースを展開します。
- 左のGlobal DatabaseにあるMisc.を展開します。
- Rexoliteをダブルクリックします。
- Metalを展開し、Stainless Steel, Genericをダブルクリックします。
- Doneをクリックしてパネルを閉じます。
Step4 - 形状の作成
Designerにはプリミティブ形状を作成する機能があります。この機能を使用して鋼板、及び欠損の形状を作成します。
Primitive 1
- PrimitivesのRectangleをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_1が作成されますので、primitive_1をクリックします。
- GUIの左下にprimitive_1の設定項目が表示されます。PropertiesにあるMaterialをststへ変更します。
- End(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ28.0, 15.0を入力します。
Primitive 2
- primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_2が作成されます。
- primitive_2をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをvoidへ変更します。
- Begin(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ13.75, 5.0を入力します。
- End(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ14.25, 10.0を入力します。
Primitive 3
- PrimitivesのPolyonをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_3が作成されますので、primitive_3をクリックします。
- GUIの左下にprimitive_3の設定項目が表示されます。PropertiesにあるMaterialをrxltへ変更します。
- Number of Pointsに5を入力します。
- Point1(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ2.0, 15.0を入力します。
- Point2(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ2.0, 17.5を入力します。
- Point3(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ6.5, 19.0を入力します。
- Point4(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ11.0, 19.0を入力します。
- Point4(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ11.0, 15.0を入力します。
Primitive 4
- PrimitivesのPolyonをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_4が作成されますので、primitive_4をクリックします。
- GUIの左下にprimitive_4の設定項目が表示されます。PropertiesにあるMaterialをrxltへ変更します。
- Number of Pointsに5を入力します。
- Point1(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ26.0, 15.0を入力します。
- Point2(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ17.0, 15.0を入力します。
- Point3(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ17.0, 19.0を入力します。
- Point4(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ21.5, 19.0を入力します。
- Point4(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ26.0, 17.5を入力します。
Step5 - 入力波形の指定
入力する(圧力)波形を指定になります。波形は時間の関数として指定しますが、ここではRicker Wavelet関数を使用します。
- Forcing Functionsのタブを展開します。Timeの横にある+をクリックすると、Define Input Time functionが開きます。
- プルダウンメニューからRicker Waveletを選択します。
- Drive Frequency (Hz) に5e+6を入力します。
- Insertをクリックしてパネルを閉じます。Timeの下に、timefunc_1のツリーが新規作成されます。
Step6 - メッシュサイズの指定
波長あたり15要素で分割するようにメッシュサイズを指定します。
- Model、及びMeshを展開します。Meshツリーの下にあるConfigurationを選択します。
- PropertiesにあるDefinitionsでWavelength Basedを選択します。
- Element per Wavelengthに15を入力します。
- Mesh Velocityを展開し、Definedを選択します。
- Valueに2350を入力します。
Step7 - 負荷の設定
音波の入力位置を指定します。音波はモデルの左端から入ります。
- Boundary Conditionsを展開します、Boundary Conditionsの下にLoadsがありますので、Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryでprimitive_3(rxlt)を、Interfacing ItemでBackground(void)を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。Loadsの下にload_1が作成されます。
- Boundary Conditionsを展開します、Loadの下にある、load_1をクリックします。
- PropertiesにあるLoad TypeでPressureを選択します
- Forcing Functionでtimefunc_1を選択します。
- Interface Definition→Minimumを展開し、X(mm), Y(mm)でそれぞれ、3.0, 15.0を入力します。
- Maximumを展開し、X(mm), Y(mm)でそれぞれ、5.0, 19.0を入力します。
Step8 - 境界条件の設定
- Boundary Conditionsの下にあるDomain Boundariesを展開します。
- PropertiesにあるX minimumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- X maximumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- Y minimumを展開し、Boundary TypeをFreeへ変更します。
- Y maximumを展開し、Boundary TypeをFreeへ変更します。
Step9 - 解析計算時間の指定
解析計算は、実時間で1.6e-5[sec]まで行います。
- Analysisをクリックします。
- Propertiesを展開し、Simulation Run Timeに1.6e-5を入力します。
Step10 - 計算結果出力の設定
2つの出力を設定します。
- X=24mm, Y=18mmにおける音圧の時間履歴(グラフ)
- 最大音圧(コンター図)
X=24mm, Y=18mmにおける音圧の時間履歴(グラフ)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをTime Historyへ変更します。
- Array TypeをAcoustic Pressureへ変更します。
- Locationを展開し、X, Yにそれぞれ24.0, 18.0を入力します。
最大音圧(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをField Dataへ変更します。
- Array TypeをAcoustic Pressureへ変更します。
- Field TypeをMaximumへ変更します。
Step11 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クライド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Job Nameにジョブ名を入力します。(ここでは、TOFD_2D)
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- Runをクリックします。
Step11 - 解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロード
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。
- Storageをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックし、Download Allを選択します。
Step12 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果のロード
- File Explorerタブをクリックします。
- ダウンロードした解析結果フォルダを展開し、.flxdatoと.flxhstをダブルクリックします。
- Results Managerタブをクリックします。
X=24mm, Y=18mmにおける音圧の時間履歴(グラフ)
- Flex History → TOFD、aprsをダブルクリックします。。
- グラフのタイトルを変更します。Plot TitleにAcoustic Pressure Recorded at Outputを入力します。
- Y軸のラベルを変更します。Y-Axis LabelにAcoustic Pressureを入力します。
最大音圧(コンター図)
- リボンメニューのReset Viewportをクリック、Reset All Viewpointsをクリックします。
- Data Out→TOFD→Time-3710へ行き、apmaxをクリックします。
コンター図を立体的に表示させることも可能です。
- リボンツリーのModel Graphicsをクリックします。
- Surface Plotをクリックすると、立体的に表示されます。
- 左クリックをしながら、モデルを回転させることができます。
まとめ
このチュートリアルでは、欠陥を含む鋼鉄ブロックに対する超音波TODF法を解析しました。チュートリアルの内容やモデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。