このチュートリアルでは、トンピルズトランスデューサ解析の方法について紹介します。プリミティブ形状作成機能を用いて3次元モデルを作成し、水中の音圧を解析します。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 3次元モデルの指定方法
- プリミティブ形状の作成方法
- ジオメトリのコピー方法
- 材料物性の編集方法
- 回路の設定方法
- 結果処理
対応バージョン: OnScale 1.28.10
注: トンピルズ(Tonpilz)トランスデューサーとは: コンパクトな設置面積で低周波と高感度の組み合わせを実現できるタイプのトランスデューサーで、ソナー製品などで使われています。
解析の概要
トンピルズトランスデューサの設計では、設計性能に関わる多くのパラメーターがあります。そのため、最適設計のための指針が必要となります。OnScaleで解析することで、設計について検討することが可能になります。
チュートリアルでは、片端を固定したトランスデューサに対して圧電スタックを励起し、水中での音圧を解析します。
以下、解析の概要を示します。
解析モデル図
表1: 解析モデル、及び解析結果の概要
モデル: | トンピルズ圧電型水中トランスジューサ |
メッシュサイズ: | 75μm |
解析の実時間 | 0.00075秒 |
出力結果: | - 最小音圧(コンター図) - 最大音圧(コンター図) - X=0[mm],Y=29.2[mm],Z=0[mm]における音圧の時間履歴(グラフ) |
解析で使用する材料物性を示します。
表2: 材料物性値
材料名 | OnScaleデータベース内の名前 | 密度 | バルク速度 | せん断速度 | Poling |
Ferroperm PZ26 | fpz26 | 7700 kg.m-3 | - | - | Y+ |
Ferroperm PZ26N | fpz26n | 7700 kg.m-3 | - | - | - |
マグネシウム | magn | 1740 kg.m-3 | 5770 ms-1 | 3050 ms-1 | - |
ステンレス鋼 | stst | 7890 kg.m-3 | 5790 ms-1 | 3100 ms-1 | - |
水(25℃) | watr | 1000 kg.m-3 | 1496 ms-1 | 0 ms-1 | - |
注: OnScaleの材料物性データベースでは、弾性率とポアソン比の代わりにバルク速度とせん断速度を値を使って定義しています。 両者の関係性について詳細を知りたい方は、ここのページをご参照下さい。
解析のワークフロー
以下、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、Tonpilz)
- 距離の単位系をmmに変更します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます
Step2 - 対象となる周波数の指定
解析の対象となる周波数を入力します。
- Set up→Project Settingsを展開します。
- PropertiesにあるFrequency of Interest (Optional)を展開します。
- Frequency of Interest (Optional)にチェックを入れます。
- Value(Hz)に200e3を入力します。
Step3 - 材料物性の選択
OnScaleに搭載されている材料物性データベースから選択、修正します。
Ferroperm PZ26
- Project Materialsクリックし、材料物性データベースを展開します。
- 左のGlobal DatabaseにあるPiezoelectricを展開します。
- Ferroperm PZ26 - fpz26をダブルクリックしてください。
- Project Materialsのfpz26を展開します。
- Piezoelectricを展開します。
- polingをY+へ変更します。
Ferroperm PZ26N
- Project Materialsのfpz26を右クリックします。
- Copy - Clone material into project listを選択します。
- OnScaleパネルが開きますので、Material nameにfpz26nを入力します。
- OKをクリックして、パネルを閉じます。
- fpz26nを展開します。
- Piezoelectricを展開し、polingをY-へ変更します。
マグネシウム/ステンレス鋼/水(25℃)
- Project MaterialsのMetalを展開します。
- Magnesium - magnをダブルクリックします。
- Stainless Steel- ststをダブルクリックします。
- Fluidを展開します。
- Water - watrをダブルクリックします。
- Doneをクリックしてパネルを閉じます。
Step4 - 形状の作成
Designerのプリミティブ形状作成機能を使用します。トランスデューサのジオメトリは、テールマス、6つのセラミックリング、ヘッドマス、そしてこれからをまとめているネジで構成されています。
プリミティブ形状は、リボンタブHomeにあるリボンメニューPrimitivesで作成します。
ネジ頭
- PrimitivesのCylinerをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_1が作成されます。
- primitive_1を右クリックし、メニュのAssign Material→ststを選択します。
- PropertiesにあるAxisでYを選択します。
- End(mm)に3.7を入力します。
- Radius Begin(mm)に5.5を入力します。
- Radius End(mm)に5.5を入力します。
- Reset Viewをクリックすると、表示がリセットされて全体形状があらわれます。
ネジ山
- primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_2が作成されます。
- primitive_2を右クリックします。
- メニュのAssign Material→ststを選択します。
- Begin(mm)に3.7を入力します。
- End(mm)に15.7を入力します。
- Radius Begin(mm)に1.25を入力します。
- Radius End(mm)に1.25を入力します。
- Reset Viewをクリックすると、表示がリセットされて全体形状があらわれます。
ネジ先端
- primitive_2を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_3が作成されます。
- primitive_3を右クリックします。
- メニュのAssign Material→ststを選択します。
- Begin(mm)に15.7を入力します。
- End(mm)に16.9を入力します。
- Radius Begin(mm)に1.25を入力します。
- Radius End(mm)に0を入力します。
ピエゾ素子
6個のピエゾ素子のディスクを作成します。
- primitive_3を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_4が作成されます。
- primitive_4を右クリックします。
- メニュのAssign Material→fpz26を選択します。
- Begin(mm)に3.7を入力します。
- End(mm)に5.7を入力します。
- Radius Begin(mm)に4.0を入力します。
- Radius End(mm)に4.0を入力します。
- Hollow begin(mm)に2.0を入力します。
- Hollow end(mm)に2.0を入力します。
- primitive_4を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_5が作成されます。
- primitive_5を右クリックします。
- メニュのAssign Material→fpz26nを選択します。
- Begin(mm)に5.7を入力します。
- End(mm)に7.7を入力します。
- primitive_4を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_6が作成されます。
- primitive_6を右クリックします。
- メニュのAssign Material→fpz26を選択します。
- Begin(mm)に7.7を入力します。
- End(mm)に9.7を入力します。
- primitive_5を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_7が作成されます。
- Begin(mm)に9.7を入力します。
- End(mm)に11.7を入力します。
- primitive_6を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_8が作成されます。
- Begin(mm)に11.7を入力します。
- End(mm)に13.7を入力します。
- primitive_7を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_9が作成されます。
- Begin(mm)に13.7を入力します。
- End(mm)に15.7を入力します。
Head Mass
- primitive_9を右クリックしてDuplicate Selectionをクリックすると、primitive_10が作成されます。
- primitive_10を右クリックします。
- メニュのAssign Material→magnを選択します。
- Begin(mm)に15.7を入力します。
- End(mm)に21.7を入力します。
- Radius Begin(mm)に4.0を入力します。
- Radius End(mm)に7.0を入力します。
- Hollow Begin(mm)に0.0を入力します。
- Hollow Radius End(mm)に0.0を入力します。
水負荷の模擬
- PrimitivesのCuboidをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_11が作成されます。
- primitive_11を右クリックし、メニュのAssign Material→watrを選択します。
- ProertiesのBegin(mm)を展開し、X(mm)に-15.0を入力。
- Y(mm)に21.7を入力します。
- Z(mm)に-15.0を入力します。
- ProertiesのEnd(mm)を展開し、X(mm)に15.0を入力します。
- Y(mm)に36.7を入力します。
- Z(mm)に15.0を入力します。
Step5 - 入力波形の指定
電圧の指定ではありません。波形だけの指定になります。波形は時間の関数として指定しますが、ここではRicker Wavelet関数を使用します。
- Forcing Functionsのタブを展開します。Timeの横にある+をクリックすると、Define Input Time functionが開きます。
- プルダウンメニューからSinusoid Pulseを選択し、Drive Ferquency(Hz)に2e5を入力します。
- Insertをクリックしてパネルを閉じます。Timeの下に、timefunc_1のツリーが新規作成されます。
Step6 - 回路の設定
回路を指定します。
- Circuitの隣の+をクリックします。
- 回路の2と3の間の線をクリックします。
- 左の電子部品の中から抵抗を選択します。
- 抵抗をクリックします。
- Resistanceの50と入力します。
- Insertをクリックしてパネルと閉じます。circuit_1が作成されます。
Step7 - メッシュサイズの指定
波長あたり30要素で分割するようにメッシュサイズを指定します。
- Modelを展開します。
- Mesh→Configurationを選択します。
- PropertiesにあるDefinitionsでWavelength Basedを選択します。
- Element per Wavelengthに20を入力します。
Step8 - 電極の指定
このステップでは、ピエゾ素子ディスク両端に電極を作成します。
- Boundary Conditionsを展開します。
- Boundary Conditionsを展開します。
- Loadsがありますので、Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryのプルダウンメニューでprimitive_1(stst)を選択します。
- Interfacing Itemのプルダウンメニューでprimitive_4 (fpz26)を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。
Load_1が作成されます。同様に、5~7を繰り返してLoad_2~Load_7を作成します。
作成されるLoad | Geometry | Interfacing Item |
Load_2 | primitive_4 | primitive_5 |
Load_3 | primitive_5 | primitive_6 |
Load_4 | primitive_6 | primitive_7 |
Load_5 | primitive_7 | primitive_8 |
Load_6 | primitive_8 | primitive_9 |
Load_7 | primitive_9 | primitive_10 |
電極の設定を行います。
- load_1をクリックします。
- PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューでVoltageを選択します。
- Terminationでgroundを選択します。
- 同様に、load_1, load_3, load_5, load_7について、1~3の手順によりgroundを設定します。
- load_2をクリックします。
- PropertiesにあるLoad Typeで、プルダウンメニューでVoltageを選択します。
- Circuitでcircuit_1を選択します。
- Terminationでtimefunc_1を選択します。
- Amplitude Scale Factorに1を入力します。
- 同様に、load_2, Load_4, load_6について、6~9の手順によりtimefunc_1を設定します
Step9 - 境界条件の設定
- Boundary Conditionsの下にあるDomain Boundariesを展開します。
- PropertiesにあるX minimumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- X maximumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- Y minimumを展開し、Boundary TypeをFixedへ変更します。
- Y maximumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- Z minimumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
- Z maximumを展開し、Boundary TypeをAbsorbingへ変更します。
Step10 - 解析計算時間の設定
本解析は静解析として行います。
- Analysisをクリックします。
- Simulation Run Timeに0.0001を入力します。
Step11 - 計算結果出力の設定
3つの出力を設定します。
- 最小音圧(コンター図)
- 最大音圧(コンター図)
- X=0[mm],Y=29.2[mm],Z=0[mm]における音圧の時間履歴(グラフ)
最小音圧(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをField Dataへ変更します。Array TypeはAcoustic Pressureのままにします。
- Field TypeをMinimumへ変更します。
最大音圧(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをField Dataへ変更します。Array TypeはAcoustic Pressureのままにします。
- Field TypeをMaximumへ変更します。
X=0[mm],Y=29.2[mm],Z=0[mm]における音圧の時間履歴(グラフ)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをField Dataへ変更します。Array TypeはAcoustic Pressureのままにします。
- Locationを展開し、Yに29.2を入力します。
Step12 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クライド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。
- Storageをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- フォルダを展開します。
- Ctrlを押しながら.flxdato, .flxhstを選択し、右クリックでDownloaded Selectionを選択します。
Step13 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果のロード
- File Explorerタブをクリックします。
- ダウンロードした解析結果フォルダを展開し、.flxdatoファイルをダブルクリックします。
- .flxhstをダブルクリックします。
X=0[mm],Y=29.2[mm],Z=0[mm]における音圧の時間履歴(グラフ)
- Flex Histroy→Tonpilz→aprsをクリックします。
- Plot TitleにAcoustic Pressure at Center of the water loadを入力します。
- xAxisのMaximumに0.0001を入力します。
最大音圧(コンター図)
- Data out→Tonpilz→Time-1939、apmxをダブルクリックします。
- Imcompatible Viewsのパネルが出た時には、Continueをクリックします。
まとめ
このチュートリアルでは、トンピルズトランスデューサ解析の方法について紹介しました。チュートリアルの内容やモデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。