水負荷条件下で動作する多層トランスデューサ

このチュートリアルでは、バッキング層と整合層を使用してシンプルな2次元トランスデューサーモデルを作成し、インピーダンス、指向性プロット、送信感度などの出力を解析する方法を学習します。

 

このチュートリアルの主な内容

  • OnScale Designerの基本的なシミュレーションワークフロー
  • 2D軸対称モデルを設定する方法
  • 単純な形状を作成する方法
  • 圧電材料のシミュレーション方法
  • 結果処理とその可視化する方法
  • Extrapolation toolの使用方法
PZTとは?: タン酸ジルコン酸鉛は、化学式Pb [ZrxTi1-x] O3(0≤x≤1)の無機化合物です。PZTとも呼ばれます。これは、顕著な圧電効果を示すセラミックペロブスカイト材料です。つまり、電界が加えられると、化合物の形状が変化します。超音波トランスデューサや圧電共振子など、多くの実用的なアプリケーションで使用されています。白色からオフホワイトの固体です。

 

解析モデルの概要

解析モデル

PZTディスクの寸法:10 mm x 2 mm

バッキング層の寸法:10 mm x 5 mm

整合層の寸法:10 mm x 1/4波長mm

水領域:15mm x 20mm

メッシュサイズ

0.1 mm

解析結果

インピーダンス

1 MHzでの指向性

送信感度

 

材料物性値

材料名 Water at 25C CTS 3203HD Vantico HY1300/CY1301 Backing (20% VF)
OnScaleデータベース内の名前 watr pmt3 hard back20
密度 1000 kg.m-3 7820 kg.m-3 1149 kg.m-3 4800 kg.m-3
バルク速度 1496 ms-1 4708.36 ms-1 2536 ms-1 1800 ms-1
せん断速度 0 ms-1 1687.891 ms-1 1179 ms-1 962 ms-1

Note: OnScaleの材料物性データベースでは、弾性率とポアソン比の代わりにバルク速度とせん断速度を値を使って定義しています。 両者の関係性について詳細を知りたい方は、ここのページをご参照下さい。

解析の目的

多くのトランスデューサセンサーは、帯域幅などを最大化するために、多層構造を使用しています。一般的な方法は、重いバッキング層と整合層を導入することです。

設計は特定の環境条件下でテストされ、実際のパフォーマンスを測定して設計を検証します。

 

Important: 新規プロジェクトウィンドウで、対称軸を正しく選択していることを確認してくださいDesignerモードで後では後から対称軸を変更することはできません。

 

解析のワークフロー

本セッションでは、各ステップ毎にワークフローを説明します。

Step 1 - 新規プロジェクトの作成

  1. New Projectをクリックします。クリック後、New Projectウィンドウが現れます。
  2. プロジェクトの名前(Transducer_2D)を入力します。
  3. 必要に応じて、Project Fileの横にある  … をクリックして、保存場所やプロジェクトファイル名を変更します。
  4. AnalysisMechanical Dynamic選択します。
  5. Model Type2D Axi-Symmetric Model (Y)を選択します。Warning: 後から対称軸を変更することはできません。必ずYを選択して下さい。
  6. Advanced にチェックを入れます。
  7. Distancemm選択します。
  8. 最後にOKをクリックします。
multilayer-transducer-new-project.png

Step 2 -- 材料物性の選択

最初に、材料物性データベースから解析で使用する材料を追加します。

  1. Project Materialsをクリックします。
  2. Fluidを展開し、水(watr)をダブルクリックしてProject Materialsに追加します。
  3. Epoxyを展開し、hardback20をダブルクリックして追加します。
  4. Piezoelectricを展開し、pmt3をダブルクリックして追加します。
  5. pmt3を展開し、poling directionY+へ変更します。
  6. Doneをクリックします。
Material_Tool.png

Step 3 - 解析形状を作成する

Note: XとYに変更を加えたら、ワークスペースを右クリックしてReset Viewを選択します。

  1. Rectangleをクリックします。
  2. Materialwatrを選択します。
  3. End (mm): X (mm) = 15を入力します。
  4. End (mm): Y (mm) = 15を入力します。
Prim_1__Water.png
  1. primitive_1を右クリックしてDuplicate Selectionを選択します。
  2. primitive_2をクリックします。
  3. materialwatrからback20へ変更します。
  4. End (mm): X(mm) = 10を入力します。
  5. End (mm): Y(mm) = 5を入力します。
Prim_2__WBack20ater.png
 

 

  1. primitive_2を右クリックしてDuplicate Selectionを選択します。
  2. primitive_3をクリックします。
  3. materialback20からpmt3へ変更します。
  4. Begin (mm): Y(mm) = 5を入力します。
  5. End (mm): Y(mm) = 7を入力します。
Prim_1__Pmt3.png

 

  1. primitive_3を右クリックしてDuplicate Selectionを選択します。
  2. primitive_4をクリックします。
  3. materialpmt3からhardへ変更します。
  4. Begin (mm): Y(mm) = 7を入力します。
  5. End (mm): Y(mm) = 7.634を入力します。
Prim_4_hard.png

Step 4 - 駆動関数を指定する

駆動関数(時間関数)が必要です。時間関数としてRicker Wavelet駆動関数をを使用します。

  1. '+' をクリックし、Define Input Time function windowを開きます。
  2. Ricker Waveletへ変更します。
  3. Insertをクリックしてウィンドウを閉じます。timefunc_1がウィンドウに追加されます。
time.png

Step 5 - メッシュサイズの指定

1波長ごとに15要素を使用します

  1. Configurationをクリックします。
  2. DefinitionsWavelength Basedを選択します。
  3. Elements per Wavelengthに15を入力します。
mesh.png

Step 6 - 電極の設定

2つの電極を表す2つの荷重を設定します。上部電極を駆動し、下部電極を接地とします。

上部電極の設定

  1. Model TreeにあるBoundary Conditionsを展開し、横にある+をクリックします。
  2. Creation ModeGeometry Interfaceを選択します。
  3. Geometryprimitive_3 (pmt3)を選択します(あるいはモデルをクリックします)
  4. Interfacing Itemprimitive_4 (hard)を選択します。
  5. Load TypeVoltageを選択します。
  6. Terminationtimefunc_1を選択します。
  7. Create Loadをクリックします。
multilayer-transducer-load-1.png

下部電極の設定

Load Definition ウィンドウはまだ開いた状態にあるとして、以下の手順で設定します。

  1. Geometryprimitive_3 (pmt3)を選択します(あるいはモデルをクリックします)
  2. Interfacing Itemprimitive_2 (back20)を選択します。
  3. TerminationGroundを選択します。
  4. Create Loadをクリックします。
multilayer-transducer-load-2.png

Step 7 - 境界条件の設定

このモデルは軸対称モデルであるため、X minimumの境界条件を対称に変更する必要があります。

  1. Domain Boundariesをクリックします。
  2. X Minimumを展開し、Symmetryへ変更します。
  3. それ以外はすべてAbsorbingへ変更します。
Boundary.png

Step 8 - 解析実時間の指定

  1. Analysisをクリックします。
  2. Simulation Timeに2e-05を入力します。
Analysis.png

Step 9 - 計算結果出力の設定

結果処理でExtrapolation toolを使用するために、外挿境界を定義します。

出力結果 1: 外挿データ

  1. +をクリックしてoutputを作成します。
  2. Output TypeExtrapolation Dataに変更します。
  3. Cutting PlaneYします。
  4. Change Cutting Point (mm) に8.5を入力します。
Output.png

Step 10 - クラウド上で解析実行

Full_Screen.png

モデルの設定が完了しましたので、クラウド上で解析を実行します。

  1. Run on Cloudをクリックします。
  2. ジョブ名を変更することも可能です。ジョブ名がストレージに表示されます。
  3. Estimateをクリックします。
  4. Runをクリックします。
Cloud.png

解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法

計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。

  1. Storageをクリックすると、以下のウィンドウが表示されます。
  2. Jobから計算した解析モデルを選択します。 
  3. Downloadをクリックします。
  4. Download Allを選択します。
Storage.png

file explorerが表示されたらファイルの保存先を選択し、Select Folderをクリックしてウィンドウを閉じます。

Step 11 - 結果処理を行う 

Post Processorモードへの切り替え

  1. Post Processorへ切り替えるためにアイコンをクリックします。
ppswitch.png

解析結果ファイルを開く、コンダクタンスを計算して表示する

  1. File Explorerで、時刻歴ファイル(.flxhst)をダブルクリックします。
  2. load1のChargeを選択します
  3. ドロップダウンメニューからReal / Imagを選択します
  4. Admittanceをクリックします。
  5. Frequency Historyの下に2つの新しい結果が作成されます。Admt:load1.reをダブルクリックして結果を表示します。
  6. アドミタンス(コンダクタンス)の実部が表示され、トランスデューサの性能をより詳細に検討することができます。
Output_Admittance.png

Extrapolation Toolを使用する

  1. Toolsタブで、Extrapolation Toolを選択します
  2. Openをクリックします。
  3. ダウンロードした外挿ファイル(.flxext)を選択します
  4. Openをクリックします。
Extr_1.png
  1. flxmdlファイルを開くか聞かれますので、Yesをクリックします
Extr_2.png

指向性(放射状プロット)

  1. Radial Plotを選択します。
  2. Y1指向性の原点を7.634e-3 mに変更します。
  3. Radius (m)を1に変更します。
  4. Angular Spreadを180に変更します。
  5. No. of points on lineを181に変更
  6. Propagation VectorをYに変更します。
  7. Drive Frequency (Hz) 1e6に変更します。
  8. Startをクリックして計算します。
Radial_1.png

放射状プロット結果の表示

Radial_2.png 

送信感度(TVR)

  1. TVR Calculationをクリックします。
  2. User Definedを選択します。
  3. Yに参照位置7.634e-3 mを入力します。
  4. Propagation directionをYへ変更します。
  5. Startをクリックして計算します。
TVR_1.png

TVR応答

TVR_2.png

まとめ

紹介したチュートリアルについて、ご自身でも設定を変更や追加、他の出力を追加したりなど、色々お試し下さい。