このチュートリアルでは、欠損がある鋼板中の超音波伝播を解析します。OnScaleのプリミティブ形状を作成する機能を用いて欠損がある鋼板のモデルを作成します。解析は2次元モデルとし、形状の対称性から、1/2モデルで解析を行います。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 2次元対称モデルの設定方法
- プリミティブ形状の作成方法
- 時間依存の境界条件(音波の入力)の設定方法
- 音圧の解析方法
対応バージョン: OnScale 1.28.10
解析の概要
鋼板の欠損は目視できないほど小さなものであっても、鋼板の使用目的・環境によって問題を引き起こす可能性があります。(例:飛行機の翼のような繊細な場合など)
実際の非破壊検査を対象とした解析で伝播解析の必要性があるかもしれません。チュートリアルでは、実際よりは簡単な形状で解析方法をご紹介します。解析により欠損を発見、また構造全体に与える影響を検討することが可能になります。
本セッションでは解析の概要を示します。
表1: 解析モデル、及び解析結果の概要
モデル: |
- 鋼板(41 mm x 22.5 mm, 1/2モデルサイズ) - 欠損(21 mm x 5 mmの長方形) |
メッシュサイズ: |
波長に対して1/15分割サイズ |
解析の実時間 | 5e-5 (sec) |
出力結果: |
- グラフ(X=20における音圧の時間履歴) - コンター図(最大音圧) |
解析で使用する材料物性を示します。
表2: 材料物性値
項目 | 材料物性値 |
材料名 | Mild Steel, Generic |
OnScaleデータベース内の名前 | steel |
密度 | 7900 kg.m-3 |
バルク速度 | 5900 ms-1 |
せん断速度 | 3200 ms-1 |
注: OnScaleの材料物性データベースでは、弾性率とポアソン比の代わりにバルク速度とせん断速度を値を使って定義しています。 両者の関係性について詳細を知りたい方は、ここのページをご参照下さい。
解析のワークフロー
本セッションで紹介する解析のワークフローになります。
以下、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、wave_prop)
- 距離の単位系をmmに変更します。
- Model Typeで2D Modelを選択します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます
Step2 - 材料物性の選択
OnScaleに搭載されている材料物性データベースから、mild steelを選択します。
- Project Materialsクリックし、材料物性データベースを展開します。
- 左のGlobal DatabaseにあるMetalを展開します。
- Mild steel, genericをダブルクリックしてください。
- Doneをクリックしてパネルを閉じます。
Step3 - 形状の作成
Designerにはプリミティブ形状を作成する機能があります。この機能を使用して鋼板、及び欠損の形状を作成します。
鋼板は2つの点[始点(X = 0、Y = 0)、終点(X = 41、Y = 22.5)]で定義される四角形、欠損は2つの点[始点(X = 20、Y = 0)、終点(X = 21、Y = 5)]の小さい四角形として作成します。
- PrimitivesのRectangleをクリックします。クリック後、Primitivesのツリーの下にprimitive_1が作成されますので、primitive_1をクリックします。
- GUIの左下にprimitive_1の設定項目が表示されます。PropertiesにあるMaterialをsteelへ変更します。
- End(mm)を展開し、X(mm), Y(mm)にそれぞれ41.0, 22.5を入力します。
次に、欠損の形状を作成します。作成した鋼板をコピーし、修正する方法で欠損を作成します。
- primitive_1上で右クリックをし、Duplicate Selectionをクリックします。そうすると、primitive_2が新規に作成されます。
- primitive_2をクリックします。
- PropertiesにあるMaterialをsteelへ変更します。
- Begin(mm)を展開し、X(mm) に20を入力します。
- End(mm)を展開し、X(mm)とY(mm)をそれぞれ21と5を入力します。
注: OnScaleでは、形状は特定の順序で作成する必要があります。作成後の形状は作成前の形状の上に表示されます。CADのように形状同士のブーリアン演算(和・差・積)を行う必要はないため、簡単に形状作成が可能です。作成した形状の順序を変更したい場合は、PropertiesにあるPrecedenceで変更します。
Step4 - メッシュサイズの指定
波長あたり15要素で分割するようにメッシュサイズを指定します。
- Model、及びMeshを展開します。Meshツリーの下にあるConfigurationを選択します。
- PropertiesにあるDefinitionsでWavelength Basedを選択します。
- Element per Wavelengthに15を入力します。
- Mesh Velocityを展開し、Definedを選択します。
- Valueに5900を入力します。
注: 音響解析で妥当な・あるいは精度のよい結果を得るためには、グリッドのサイズを十分に小さくする必要があります。 適切なメッシュサイズは、媒質中を伝播する波長を15分割したサイズのメッシュを作成することで、良い結果を得ることができます。
Step5 - 入力波形の指定
入力する(圧力)波形を指定になります。波形は時間の関数として指定しますが、ここではRicker Wavelet関数を使用します。
- Forcing Functionsのタブを展開します。Timeの横にある+をクリックすると、Define Input Time functionが開きます。
- プルダウンメニューからRicker Waveletを選択します。
- Insertをクリックしてパネルを閉じます。Timeの下に、timefunc_1のツリーが新規作成されます。
音波の入力位置を指定します。音波はモデルの左端から入ります。
- Boundary Conditionsを展開します、Boundary Conditionsの下にLoadsがありますので、Loadの隣にある+をクリックします。クリックすると、Load Definitionが開きます。
- Creation ModeのプルダウンメニューでGeometry Interfaceを選択します。
- Geometryでprimitive_1(steel)を、Interfacing Itemでside 1(xmin)を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。
入力する音波を指定します。
- Boundary Conditionsを展開します、Loadの下にある、load_1をクリックします。
- PropertiesにあるLoad TypeでPressureを選択します
- Forcing Functionでtimefunc_1を選択します。
Step6 - 境界条件(対称面)の設定
本チュートリアルでは、1/2モデルとしています。対称面を対称境界に指定します。
- Boundary conditionsを展開し、Domain Boundariesをクリックします。
- PropertiesのY Minimumを展開します。Boundray TypeをSymmetryへ変更します。
Step7 - 解析計算時間の指定
解析計算は、実時間で5E-5[sec]まで行います。
- Analysisをクリックします。
- Propertiesを展開し、Simulation Run Timeに5e-5を入力します。
注: モデル領域を音波が通過する時間に対して、解析する実時間を大きくし過ぎないでください。解析が終了するまでに時間がかかります。
Step8 - 計算結果出力の設定
2つの出力を設定します。
- グラフ(X=20における音圧の時間履歴)
- コンター図(最大音圧)
注: OnScaleでは、シミュレーションを開始する前に出力方法を詳細に指定しておく必要があります。
X=20における音圧の時間履歴グラフ
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをTime Historyに変更します。
- Locationを展開し、Xに20を入力します。
最大音圧のコンター図
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeをField Dataへ変更します。
- Array TypeをAcoustic Pressureへ変更します。
- Field TypeをMaximumへ変更します。
Step9 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クライド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- 2コアを使って並列計算を実行します。2CPUsを選択します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です。
- Storageをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックします。
- メニューが開きます。Download Allを選択します。
Step11 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果のロード
- File Explorerタブをクリックします。
- ダウンロードした解析結果フォルダを展開します。
- .flxdatoと.flxhstをダブルクリックします。
- Results Managerタブをクリックします。
X=20における音圧の時間履歴(グラフ)のプロット
- Flex History → wave_prop、aprsをダブルクリックします。。
- グラフのタイトルを変更します。Plot TitleにAcoustic Pressure Recorded at Fornt of Defectを入力します。
- Y軸のラベルを変更します。Y-Axis LabelにAcoustic Pressureを入力します。
- X軸のレンジ(最大値)を変更します。xAisのMaximumに4e-5を入力します。
最大音圧(コンター図)
- リボンメニューのReset Viewportをクリック、Reset All Viewpointsをクリックします。
- Data Out→wave_prop→Time920へ行き、apmaxをクリックします。
伝搬を立体的に表示させることも可能です。
- リボンタブのModel Graphicsをクリックします。
- SymmetryのプルダウンメニューでAbout Yを選択すると、全形状が表示されます。
- Surface Plotをクリックすると、立体的に表示されます。
- 左クリックをしながら、モデルを回転させることができます。
まとめ
このチュートリアルでは、1/2モデルを用いて、欠損がある鋼板中の超音波伝播を解析しました。チュートリアルの内容やモデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。