このチュートリアルでは軸受の静解析を行います。軸からの荷重に対して、軸受にかかる応力や変位を解析します。予め作成されたCADデータをOnScale Desingerに読み込み、Designerで解析設定を行います。
このチュートリアルの主な内容です。
- OnScale Designerの基本的な作業フロー
- 3Dデータを読み込む方法
- 材料物性の指定方法
- 荷重や境界条件の設定
- 構造解析(静解析)の実行方法
- 結果処理(変位、応力の確認方法)
- 追加で解析結果を得る方法(ミーゼス応力の追加計算と結果処理)
対応バージョン: OnScale 1.28.10
解析の概要
解析対象は、軸受が付いた軟鋼のハウジングです。軸受けには軸から40,000Nの荷重を受けていると想定しています。軸はモデル化せず、荷重は軸受に境界条件を設定する方法によりモデル化します。またハウジング形状は対称形状をしているため、1/2サイズの対称モデルとしています。荷重に対する変位・応力を把握することにより、ハウジング形状の設計変更、荷重による破損の可能性などを検討することが可能になります。
表1: 解析モデル、及び解析結果の概要
モデル(ハウジング): |
寸法200 mm×200 mm×250 mm |
メッシュサイズ: |
4 mm |
最大イタレーション回数 |
1000イタレーション |
出力結果: |
- [10,50,150]におけるX方向変位のイタレーション履歴グラフ - コンター図(X方向の変位) - コンター図(応力テンソルのXX成分) - コンター図(ミーゼス応力) |
解析で使用する材料物性を示します。
表2: 材料物性値
項目 | 材料物性値 |
材料名 | Mild steel |
OnScaleデータベース内の名前 | steel |
密度 | 7,900 kg.m-3 |
バルク速度 | 5,900 ms-1 |
せん断速度 | 3,200 ms-1 |
図1: モデル形状、及び境界条件の概要
解析のワークフロー
本セッションでは、各ステップ毎にワークフローを説明します。
Step1 - 新規プロジェクトの作成
- New Projectをクリックします。
- プロジェクトの名前を入力します。(ここでは、pillow box)
- 距離の単位系をmmに変更します。
- ファイルを保存しておく作業フォルダを選択します。
- 最後にOKをクリックしパネルを閉じます。
Step2 - CADデータのインポート
事前に準備したCADデータをDesignerにインポートします。 CADデータは ここからダウンロードしてください。
- Import Geeomtryをクリックします。
- ダウンロードしたCADデータ"bracket.step"を選択します。
- File scale factorに0.001を入力します。
- 最後にImportをクリックしパネルを閉じます。
注: Step1で単位系をmmを選択すると、OnScaleの条件設定ではmmが使用されます。CADデータがmで作成されている場合はmmへ変換する必要があります。scale factorを0.001とすることでm→mmへ変換します。
Step3 - インポートしたCAD形状のチェック
インポートした形状の大きさをチェックします。
- Geometryの下に作成されたpart_1をクリックします。
- クリックすると、Propertiesに形状のサイズが表示されます。寸法200 mm×200 mm×250 mmとして読み込まれているか確認します。
Step4 - 材料物性の選択
OnScaleに搭載されている材料物性データベースから、mild steelを選択します。
- Project Materialsクリックし、材料物性データベースを展開します。
- 左のGlobal DatabaseにあるMetalを展開し、Mild steel, genericを選択します。展開はMetalの左隣にある>をクリックするとできます。
- 右矢印をクリックします。
- Doneをクリックしてパネルを閉じます。
Step5 - 材料物性の設定
読み込んだ形状にMild Steel(Step4で選択した物性値)を設定します。
- 表示されているモデル上で右クリックします。
- メニューの"Assign Material"→"steel"を選択します。
Step6 - メッシュサイズの確認
解析で使用されるメッシュの確認を行います。
- Modelを展開し、Configurationをクリックします。
- Propertiesでメッシュ作成の設定を確認します。本チュートリアルではBasicを使用します。
- リボンタブのModel Graphicsをクリックします。
- リボンメニューのShow Meshingをクリックします。
- Full extentsを選択します。
- 全体の形状に対するメッシュサイズサイズを確認します。
Step7 - 境界条件(荷重)の設定
荷重(40,000N)を与える境界条件の位置を指定します。
- Boundary conditionsを展開します。
- Loadの隣の+をクリックします。
- Load DefinitionパネルのCreation ModeがSurface Selectionになっていることを確認します。下図に表示されている面を選択します。
- Create Loadをクリックしてパネルを閉じます。
荷重を設定します。
- Forcing Functionsを展開します。
- Staticの隣の+をクリックします。
- PropertiesにあるAmplitudeに40,000を入力します。(staticfunc_1が作成されます)
境界条件として荷重を設定します。
- Boundary conditionsを展開すると、先ほど作成されたLoad_1があります。Load_1をクリックします。
- PropertiesにあるLoad TypeでForceを選択します。
- Forcing Functionでstaticfunc_1を選択します。
- Scaleを展開します。Xに-1を入力します。YとZは0のままにしてください。これは、-X方向のみにstaticfunc_1で指定した荷重(40,000)を加えるためです。
Step8 - 境界条件(ボルト穴)の設定
2個のボルト穴があります。拘束条件(穴がボルト固定されている)を境界条件としてモデル化します。まず、境界の位置を指定します。
- Boundary conditionsを展開し、Loadの隣の+をクリックします。
- Load Definitionのパネルでボルト穴の位置をしています。Load DefinitionのSurface Angleに180を入力します。
- ボルト穴の側面をクリックします。(図中の③)
- Create Loadをクリックします。(Load_2が作成されます)
- 引き続き、別のボルト穴の側面をクリックします。(図中の⑤)
- Create Loadをクリックします。(Load_3が作成されます)
ボルト穴に対して境界条件(固定)を設定します。
- Boundary conditionsを展開し、Load_2をクリックします。
- PropertiesにあるLoad TypeでFixedを選択します。
- 同様に、Load_3をクリックします。
- PropertiesにあるLoad TypeでFixedを選択します。
Step9 - 境界条件(対称面)の設定
本チュートリアルでは、実際のハウジングの右半分(1/2モデル)のみをモデル化しています。対称面を対称境界に指定します。
- Boundary conditionsを展開し、Domain Boundariesをクリックします。
- Propertiesを展開、Y Minimumを展開します。
- Boundary TypeでSymmetryを選択します。
Step10 - 静解析の設定
本解析は静解析として行います。
- Analysisをクリックします。
- Propertiesを展開、Analysis TypeでStaticを選択します。
注: 静解析は解析が収束するため反復計算を行います。その反復回数は最大で1000イタレーションと設定します。後に記載しますが、1000イタレーションで収束解が得られているかどうか確認する必要があります。
Step11 - 計算結果出力の設定
3つの出力を設定します。
- [10,50,150]におけるX方向変位のイタレーション履歴(グラフ)
- X方向の変位(コンター図)
- 応力テンソルのXX成分(コンター図)
X = 0, [10,50,150]におけるX方向変位のイタレーション履歴(グラフ)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeでTime Historyを選択します。
- Array TypeでDisplacementを選択します。
- Array ComponentでXを選択します。
- Location(mm)を展開し、X, Y, Zにそれぞれ10.0, 50.0, 150.0を入力します。
X方向の変位(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeでData Snapshotをを選択します。
- Array TypeでDisplacementを選択します。
- Array ComponentでXを選択します。
応力テンソルのXX成分(コンター図)
- Outputsの横にある+をクリックします。
- Propertiesを展開し、Output TypeでData Snapshotを選択します。
- Array TypeでStressを選択します。
- Array ComponentでXXを選択します。
Step12 - クラウド上で解析実行
モデルの設定が完了しましたので、クラウド上で解析を実行します。
- Run on Cloudをクリックします。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- 8コアを使って並列計算を実行します。8CPUsを選択します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする方法
計算終了後、解析結果ファイルをローカルマシンへダウンロードする必要があります。ダウンロードは結果処理を行うために必要です
- Storageをクリックします。
- 緑の更新ボタンをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックします。
- メニューが開きます。Download Allを選択します。
Step13 - 結果処理
結果処理はPost-processorで行います。
DesignerからPost-processorへGUIをスイッチ
アイコンをクリックして、Post-processorのGUIへスイッチします。
[10,50,150]におけるX方向変位のイタレーション履歴グラフ
- File Explorerタブをクリックします。
- ダウンロードした解析結果フォルダを展開します。
- .flxhstをダブルクリックします。
- pillow_boxを展開し、xdspをダブルクリックします。
注: 横軸はTimeを表示されていますが、イタレーション数です。
500回以降はX方向の変位が一定値になっていることが確認できます。その結果から、収束解が得られたと判断できます。
解析結果: X方向の変位(コンター図)
- 解析結果フォルダにある.flxdatoをダブルクリックします。
- Data out → snapshot → Time-582 → Dspl, xをダブルクリックします。
解析結果:変位のよる変形(コンター図)
- リボンタブのModel Graphicsをクリックします。
- Deformed Grid Plotをクリックします。変形後の形状を確認することができます。
Step14 - 追加の解析計算
ミーゼス応力の出力設定をしていなかったため、ハウジングに働くミーゼス応力を確認することができません。追加計算を行い、ミーゼス応力を確認します。
DesignerのOutputsツリーで設定を追加することで可能ですが、ここではスクリプトによる方法を紹介します。(Outputsから行っても同じです)
ミーゼス応力の追加設定
作業フォルダに.flxinpファイルがあります。.flxinpファイルをダブルクリックすると、Analystモードでファイルが開きます。.flxinpを開くと計算用スクリプトファイルの内容を確認することができます。
calcのブロックに、出力変数が設定されています。
calc
disp /* calculate displacements
strs xx /* calculate stresses in the field
sj2p
end
ミーゼス応力を出力変数として追加します。以下の青文字がミーゼス応力の算出(math vmiss行)と、その追加出力(out vmissg)です。
data
file out 'snapshot.flxdato'
math vmises = sqrt ( 3. ) * { sj2p }
out vmises
out xdsp
out sgxx
end
再計算の実行
- Run on Cloudをクリックします。
- Estimateをクリックして計算で消費するコア時間(概算)を算出します。
- 8コアを使って並列計算を実行します。8CPUsを選択します。
- Runをクリックします。
解析結果ファイルのローカルマシンへダウンロード
- Storageをクリックします。
- 緑の更新ボタンをクリックします。
- Jobのプルダウンメニューからジョブ名を選択します。
- Downloadをクリックします。
- メニューが開きます。Download Allを選択します。
ダウンロード後、Post-processorのGUIへスイッチします。
解析結果:ミーゼス応力(コンター図)
- File Explorerタブをクリックします。
- .flxdatoをダブルクリックします。
- Data out → snapshot → Time-582 → Dspl, xをダブルクリックします。
まとめ
このチュートリアルでは、1/2モデルを用いて軸受の静解析を行いました。チュートリアルの内容や、モデルファイル等が必要でしたら弊社サポートまでお問合せ下さい。