材料物性データ表から、圧電の材料特性を計算する方法

セクション1:はじめに

材料物性データ表の例

  • 圧電素子の製造メーカから材料物性データ表として圧電材料特性が得られたとしても、それをOnScaleの形式に変換するのは面倒な場合があります。
  • ここでは以下の材料物性データ表を例に、このデータ表にあるソフトセラミック材料「 C-6 」をOnScaleのの形式に変換します。
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DataSheet-for-Part-1.jpg

最初に、圧電性を定義する方程式、及びこれらの材料係数の意味について紹介します。

圧電効果について

  • 圧電効果は、結晶性材料の機械的状態と電気的状態の間の電気機械的相互作用から生じます
  • 圧電効果は可逆的な現象です

piezo-gif-animation_v1.gif

 圧電方程式

線形圧電性は、電気的および弾性的な機械的な作用の効果です。これらはそれぞれの法則によって定義されます。

材料の電気的挙動:

 

electrical-behavior.png

D電荷密度変位(電気的変位)

ε誘電率(自由体の誘電率)

E電界強度

弾性材料に関するフックの法則:

mechanical_behavior.png

Sひずみ

s短絡状態でのコンプライアンスです

T:応力

この2式を結合させた、いわゆるstrain-charge formは以下のように書けます。

coupled_relations.png

これらの方程式を等価な行列で考えます。

 

正方PZT C4VのStrain-chargeマトリクス関係


例えば、4mm(C4v)結晶クラスの材料(正方晶PZTまたはBaTiO3などの分極化圧電セラミックなど)および6mm結晶クラスの材料のひずみ電荷は、(ANSI IEEE 176)としても記述できます。

 

C4v-matrix-piezo-equations.png

圧電材料の構成方程式

実際には、圧電係数は次の4つの方程式で定義できます。

4-types-variables-piezo-material.png

使用する係数に応じて、前の2つの方程式を4つの異なる形式で定義できます。

4-forms-constitutive-equations.png

セクション2:OnScaleで圧電材料を定義に必要な物性値

圧電材料の正確な記述には、 13の独立したパラメーター が必要です。

  • 密度-ρ
  • 6つの剛性[c](またはコンプライアンス[s])コンポーネント:c11、c12、c13、c33、c44、c66
  • 3つの 圧電係数 ([d]または[e]):ex5、ez1、ez3
  • 2つの誘電率( 比誘電率 )([εT]または[εS]:εxxおよびεzz)
  • メカニカルQ値 (無次元)

 

Note:  OnScaleでは、相対誘電率εxxおよびεzzを直接入力できます。 行列形式[εT]または[εS]は、特定の変換を実行する必要がある場合に備えて、εxxとεzzから計算できます。

 

OnScaleでpmt3などの材料特性を見ると、次のように変換されます。

13-piezo-parameters-required-onscale.png

材料物性データ表で変換が必要な物性値について

この材料データシートでは、 密度 、メカニカル Q値 、および 2つの誘電率 (比誘電率とも呼ばれます)が記載されています。

データ表のヤング率とポアソン比を使用して、 剛性マトリックス(1) を計算する必要があります。次に、提供された行列[d]から圧電係数の 行列[e](2) を計算する必要があります。

capture-data-material-datasheet.png

1- 剛性マトリクスの計算

まずコンプライアンスマトリクスを計算する必要があり、次にそれを逆にして剛性マトリクスを取得できます。 PZT材料は横等方性(6mm結晶対称性)を示すため、次の行列を使用してコンプライアンス行列を計算できます。

compliance_matrix.png

横弾性係数G12は、次の方程式を通じて、横ポアソン比と横剛性に関連しています。

transverse_modulus_G12.png

これは、このコンプライアンスマトリックスと関連する剛性マトリクス(コンプライアンスマトリクスの逆行列)を計算するために使用できるpythonスクリプトです。

import numpy as np
from numpy.linalg import inv

E1 = 6.2e10 #N/m2
E2 = 6.2e10 #took E2=E1
E3 = 4.9e10
nu = 0.32
E5 = 1.9e10
G6 = E1/(2*(1+nu))

#compliance matrix
s = np.array([[1/E1,-nu/E2,-nu/E3,0,0,0],
	[-nu/E1,1/E2,-nu/E3,0,0,0],
	[-nu/E1,-nu/E2,1/E3,0,0,0],
	[0,0,0,1/(2*E5),0,0],
	[0,0,0,0,1/(2*E5),0],
	[0,0,0,0,0,1/(2*G6)]])

#print (s)

#stiffness matrix
c = inv(s)

for i in range(6):
	for j in range(6):
		print('c'+str(i+1)+str(j+1)+'='+str(c[i][j]))

Note:  このスクリプトを実行するに、Pythonを インストールして後にPythonのモジュールnumpy をインストールする必要があります。

 

以下、結果を示します。

コンプライアンスマトリクス

[[ 1.61290323e-11 -5.16129032e-12 -6.53061224e-12  0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00]
 [-5.16129032e-12  1.61290323e-11 -6.53061224e-12  0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00]
 [-5.16129032e-12 -5.16129032e-12  2.04081633e-11  0.00000000e+00   0.00000000e+00  0.00000000e+00]
 [ 0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  2.63157895e-11  0.00000000e+00  0.00000000e+00]
 [ 0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  2.63157895e-11  0.00000000e+00]
 [ 0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  0.00000000e+00  2.12903226e-11]]

剛性マトリクス

[[8.87205387e+10 4.17508418e+10 4.17508418e+10 0.00000000e+00  0.00000000e+00 0.00000000e+00]
 [4.17508418e+10 8.87205387e+10 4.17508418e+10 0.00000000e+00  0.00000000e+00 0.00000000e+00]
 [3.29966330e+10 3.29966330e+10 7.01178451e+10 0.00000000e+00  0.00000000e+00 0.00000000e+00]
 [0.00000000e+00 0.00000000e+00 0.00000000e+00 3.80000000e+10  0.00000000e+00 0.00000000e+00]
 [0.00000000e+00 0.00000000e+00 0.00000000e+00 0.00000000e+00  3.80000000e+10 0.00000000e+00]
 [0.00000000e+00 0.00000000e+00 0.00000000e+00 0.00000000e+00  0.00000000e+00 4.69696970e+10]]

2-  圧電係数[d]からの[e]への変換

これで剛性マトリクスが作成されたので、材料データ表に記述されている係数[d]から係数[e]を計算できます。

extract-d-coefficients_from_the_material_datasheet.png

これらの[d]係数を変換するには、efunda Webサイトで紹介されている変換関係のいくつかを確認する必要があります。

Stress-ChargeからStrain-Chargeへ

strain-charge-stress-charge-transformation-piezo-d-e.png

これにより、次のことがわかります

  • [e]を計算するには、関係[e] = [d]。[c]を使用する必要があります
  • [c]は以前に計算された剛性マトリクスです。

Note:  ここの[c]はコンプライアンスマトリクスではなく、剛性マトリクスです。

次のPythonスクリプトを使用して計算することができます。

import numpy as np
from numpy.linalg import inv

# Piezo properties
d11 = 0
d12 = 0
d13 = 0
d14 = 0
d15 = 758e-12
d16 = 0
d21 = 0
d22 = 0
d23 = 0
d24 = d15
d25 = 0
d26 = 0
d31 = -210e-12
d32 = d31
d33 = 472e-12
d34 = 0
d35 = 0
d36 = 0

d = np.array([[d11,d12,d13,d14,d15,d16],[d21,d22,d23,d24,d25,d26],[d31,d32,d33,d34,d35,d36]])

e = d @ c

for i in range(3):
          for j in range(6):
                      print('e'+str(i+1)+str(j+1)+'='+str(e[i][j]))

次の[e]係数を入力します。

e11=0.0
e12=0.0
e13=0.0
e14=0.0
e15=28.804
e16=0.0
e21=0.0
e22=0.0
e23=0.0
e24=28.804
e25=0.0
e26=0.0
e31=-11.824579124579124
e32=-11.82457912457913
e33=15.56026936026936
e34=0.0
e35=0.0
e36=0.0

これですべての係数が揃ったので、この新しい材料をOnScaleに入力する準備ができました。

セクション3:OnScaleで新しい圧電材料を作成

この新しい圧電材料を Global databaseに追加する手順を示します。

  1. Add Global Materialをクリックします
  2. 材料の説明を追加する
  3. 材料名を追加します(一意である必要があります)
  4. 材料のカテゴリと材料モデルを選択する
  5. 変更する係数をダブルクリックします
  6. Saveをクリックします

add_a_new_material.png

That's all for now.